深海の叫び – 第2章:暗闇の影 後編

ローレンスは、その頃、解析ソフトの画面に映る数値を指差しながら、「この波形は、単に揺れるだけでなく、まるで一つのリズムを刻んでいるかのようだ。もし、このリズムが隊員の心理状態と連動しているとすれば、我々は、内面の狂気への扉を、ほんの少しずつ開いてしまっているのかもしれない」と述べ、全員はその重い意味に頷いた。

斎藤は、深い決意と同時に不安を隠せずに、「現状は把握した。今後、内面の異常反応に対する緊急対策チームを編成する。各自が、精神的な不具合を感じたときは、即座に報告して、必要なケアを受ける体制を整えること。それと同時に、我々はこの異常な現象の原因を徹底的に解明し、何がこの深海の狂気を引き起こしているのか、明らかにしなければならない」と宣言し、部屋は再び厳粛な雰囲気に包まれた。

中村は、隊員の健康を守ろうと、やわらかくも毅然とした口調で、「皆さん、無理はなさらないでください。私たちは互いに支え合い、この未知の恐怖に打ち勝つためにここにいます。心のケアも、決して後回しにしないように」と呼びかけ、隊員たちはその言葉に一層の安心感を見出すように努めた。

船内では、やがて、また新たな異常信号がモニターに現れ始めた。今度は、深海の暗闇の更なる深淵から、何かが、静かにしかし確実に動いていることが確認された。技術担当者が、改めて映像を精査しながら、「この影の動きは、以前のものと異なり、より規則的で、強烈な意志を感じさせます。まるで、深海そのものが生きているかのようです」と報告すると、斎藤は、その映像に引き込まれるように静かに見入った。

ローレンスは、声を潜めながら、「この異常は、我々の内面に隠されていた恐怖が、外界にまで投影された結果かもしれません。感情と物理現象の境界が崩れ、狂気が次第に形を持って現れているのです」と、低い声で呟いた。

斎藤、中村、ローレンス、そして探査隊全体は、深海の暗闇の中で、次第に内面の恐怖と狂気が具現化していく様子を、静かにしかし確実に感じ取りながら、今日という一日の進行に従事していた。全員が、未知の深淵と自らの内面に潜む暗い感情との戦いの最中であり、その戦いは、単なる探査任務を超えた人間としての究極の試練となっていた。

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