影の道

薄暗い村の外れに位置する古いトンネル。小学生の頃、健太は友達たちとその前でたわいない話をしながら、恐怖に震えていた。村には「そのトンネルを越える者は二度と戻れない」という言い伝えがあったからだ。そのときは、おどけている自分を隠しきれず、ただ恐ろしさに感じていた。

健太は成長し、村の外でも様々な話を耳にするようになったが、あのトンネルのことはいつも引っかかっていた。幼なじみの裕樹がトンネルに入って以来、彼は戻ってこなかった。その影は、健太の心に深い傷として残り続けた。失った友を思い、少しでも彼の足跡を追おうとする衝動が抑えきれなくなっていた。

ある霧深い夜、ためらいながらも健太は再びトンネルに向かった。彼の心の奥底には、過去の出来事に関する真実を探し出したいという願いが宿っていた。そして、彼は抜け道のような暗い穴に一歩を踏み入れる。トンネルの中はひんやりとしており、まるで呼吸をするのを妨げているかのようだった。

「裕樹、どこにいるんだ…」

名を呼ぶ声はかすかに響くが、返事はなかった。導かれたように進むうちに、彼は不安に駆られ、背筋が凍りつく感覚を覚えた。また、村の人々の視線が背後に迫っているような気がした。

進み続けると、トンネルの壁でさえ、彼の記憶の映像を映し出す。ただの石壁だと思っていたが、健太は思いもよらず、それらの映像が祖父の顔や友人たちの笑顔を映し出すことに気づく。

「みんな…どうして…?」

彼の心に広がるのは、過去の記憶が溢れんばかりの光景だった。友人たちが陽気に遊んでいる姿、裕樹が自らの足元に隠した秘密の箱を見せてくれたときの微笑ましい表情。

だが、突如として暗雲が彼の心を覆った。彼方から聞こえる友人たちの悲痛な叫び声が、急激に近づいてくる。意味もなく加速する心臓、そして目の前には彼らの影が広がっていく。

「私たちを忘れないで、健太…」

「助けて…!」彼の昔の友達たちの声が次第に絶望感に変わっていく。トンネルの内部は、彼自身の心の悪夢を映し出す鏡になっていた。

その瞬間、健太は何かに突き動かされるようにしてトンネルを進み続けた。流れる汗が目に入り、情けなくも涙が溢れ出す。自分が何を探し求めているのか、彼には分からなかった。家族や友人たちが彼を見捨てたことへの怒りと悲しみが交錯する。

「もう帰れないのか…」健太は声を失い、涙が頬を伝う。彼は逃れられない何かに引き寄せられているようだった。まるで彼の運命は、あのトンネルに囚われた者たちと同じ道を歩むことを運命づけられているようだった。

進み続けると、目の前でまた別の幻想が立ち現れた。裕樹の傷ついた姿。彼の目は無慈悲なほど冷たく、力なく地面に膝をついていた。健太は足を止め、声をかけたいと思ったが、言葉が出てこなかった。彼の存在が村の秘密に捧げられたかのように思えた。

消えゆく健太の過去は、まるで彼を取り囲む魔のトンネルの一部になっていた。囚われた者たちの「忘れ去られた怨念」は、重く彼にのしかかり、彼を飲み込んでいく。その影は、過去の続きを求める彼に手を差し伸べる。健太は、何かが起こることを強く感じた。

ただ、怖れに耐えきれず、健太は逃げ出そうとした。振り返れば、親友たちが相変わらず彼を呼び続けていた。「私たちのもとに来て…!」と。彼の心の中の葛藤が、ますます激しくなっていく。彼は過去の影から逃れられず、流れ落ちる竜巻の中でただひたすら自分自身を見失っていた。

トンネルの中央に差し掛かると、急に何かが身体に絡みついた。冷たくて、重くて、もがけばもがくほど離れなかった。「逃げないで…私たちの仲間になって…」それは、自分が愛していた友人たちの声だった。彼の心は絶望に支配され、「帰りたい」と願うことすら忘れてしまった。

そして、健太は完全に呪われ、その場で消え去った。彼を待つ村の人々は、その存在を一瞬で忘れた。長い静寂がその後の空間を支配し、暗い符号、その名は「影の道」。彼の叫びだけが空に響き渡り、村の伝説として語り継がれ運命づけられていくのだった。