前編 後編
太郎は、高校三年生だった。彼は、成績も運動も平凡な普通の男子生徒だったが、家族と友達に恵まれて幸せな日々を送っていた。彼は、父親の勤める会社の跡取りとして、将来は大学に進学することを決めていた。
ある日、太郎は、自分の部屋でひとり宿題をしていた。彼は、数学の問題に苦戦しながら、教科書とノートをめくっていた。すると、ノートの間から一枚の紙が落ちてきた。太郎は、それを拾ってみると、養子縁組の書類だということに気づいた。その書類には、太郎の本名や生年月日、本当の両親の名前や住所などが記されていた。
太郎は、目を疑った。自分が養子だったなんて、今まで一度も聞いたことがなかった。彼は、書類を握りしめて、リビングに駆け込んだ。そこには、太郎が父親と母親だと思っていた二人がテレビを見ていた。
「お父さん、お母さん!これは何なんだ!」
太郎は、書類を差し出しながら叫んだ。父親と母親は、驚いて立ち上がった。
「太郎、それはどこで見つけたんだ?」
父親が問い返した。
「自分の部屋だよ!ノートの間から出てきたんだ!」
太郎が答えた。
「そうか……」
父親は、苦しそうに息をついた。
「じゃあ、話さなきゃならないか……」
母親は、涙ぐみながら言った。
「太郎……実はね……」
二人は、太郎に真実を告げようとした。しかし、太郎は聞く耳を持たなかった。彼は、怒りと悲しみで心が痛んだ。彼は、自分の人生が嘘で塗り固められていたことに気づいた。
「嘘つき!嘘つき!嘘つき!」
太郎は、泣き叫びながら部屋に駆け戻った。彼は、ドアをバンと閉めて鍵をかけた。彼は、ベッドに倒れ込んで枕を抱きしめた。彼は、自分の本当の両親に会いたいという思いを抱いた。
太郎は、その日から学校に行かなくなった。彼は、部屋にこもって、養子縁組の書類を何度も見つめた。彼は、本当の両親の名前と住所を頭に叩き込んだ。彼は、彼らを探す旅に出ることを決めた。