和菓子の灯がともるとき – 12月30日 後編

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病院を出る頃には昼近くになっていた。母が診察室で先生と長話をしているため、由香が先に駐車場まで車を取りに行くことになる。外へ出ると、鋭い冬の空気に思わず身をすくめた。そのまま駐車場を横切ろうとすると、少し離れたところに亮の姿が見える。ちょうどこちらに気づいたらしく、ちらりと目が合った。

「亮…」と小さくつぶやきながら、由香は近づいていった。昨夜、ちょっとした衝突があって気まずい空気になっていたのだが、先に口を開いたのは亮のほうだった。「昨日はごめん。熱くなりすぎて、由香にきつく言っちゃった。悪かったよ」と頭を下げる。由香は自分も「私もごめん。わかっているのに、気持ちばっかり空回りしてて。あのときは正直、八つ当たりみたいになっちゃった」と目を伏せた。

二人してしばしの沈黙があり、そのあと、どこからともなくやってきた冷たい風が二人の間を吹き抜ける。けれど、この沈黙は昨夜のような居心地の悪さではなく、わだかまりがほどけつつある静けさに近い。やがて亮が「まあ、いろいろ考えることは多いよな。年末年始のイベントも、商店街の人たちがやる気を失ってるなら、無理に押し通すわけにもいかないし…」とつぶやくように言った。

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