夜のバス停 – 第1話

夜の秘密

バス停の薄暗がりに浮かぶ二つの影。シュウとユイは再びそこで落ち合った。黄昏時の空気がほんのり冷たい。シュウはコートの襟を立て、ユイは窮屈そうに肩をすくめていた。

「寒いね」とシュウが言うと、ユイは小さく頷いた。彼女の目は、遠くを見ているようで、内省的な輝きを帯びていた。

シュウはユイの家出の理由を知りたがっていたが、彼女が自ら話すのを待った。そして、その夜、彼女は口を開いた。家族との折り合いがつかず、自分の居場所を見つけるために家を出たこと。絵を描くことに理解を示さない両親に反発していたこと。

ユイの話を聞きながら、シュウは自分の置かれている状況を考えた。会社では、若手の台頭と新しい技術の導入に追いつけず、彼の経験は徐々に色褪せていく。彼は自分が過去の栄光にすがっているだけではないかという疑念に苛まれていた。

会話は彼らの関係をさらに深めていった。ユイはシュウの職場での悩みに耳を傾け、彼はユイの芸術への情熱に共感を示した。シュウは、自分もかつては夢を追いかけていたことを思い出した。ユイの純粋さは、彼の中に埋もれていた情熱を掘り起こした。

シュウは、ユイに自分の過去を語った。若い頃に抱いていた野望と、途中で諦めた夢について。ユイはそれを真剣な眼差しで聞いていた。彼女の存在が、シュウにとって新たな視点を与えていた。

夜は更けていき、バスの到着時間が近づいていた。二人はこれまでとは違う、もっと深い絆を感じながら別れを告げた。バスが去っていく音が遠くに消えていく中、シュウはひとり、長く息を吐き出した。

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