和菓子の灯がともるとき – 12月28日 後編

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ちょうどそんなとき、店の扉から「おーい」と母の声が聞こえた。昼も近づいてきたころ合いを見計らい、母・祥子が差し入れを持ってきてくれたのだ。真っ白い息を吐きながら店内を覗き込んだ母は、予想以上に片づいた様子を見て、「由香と亮くん、けっこう頑張ったのね」と目を丸くする。

「まだまだ途中だけど、とりあえず埃はだいぶ取れたかな。寒いけど大丈夫だった?」と聞く由香に、母は「二人が掃除してるなら何か食べるものを持っていったほうがいいかなと思って」とほほ笑む。そのまま簡易のテーブルがわりになる木箱を使ってお弁当を広げると、ほかほかのおかずや温かい汁物のいい匂いが店内に漂った。

「わあ、おばさん、相変わらず料理上手だなあ。うちでこんな料理は出ないからうれしいよ」

亮は母の手料理を口にしながら、まるで少年のように目を輝かせる。母は「たいしたものじゃないわよ。おせち料理とかは、今年もどうしようか考えてるの。お父さんの体調があるし、店も再開できるかどうか…」と少し声を落とす。だが、亮は「おばさんの作るおせち料理、毎年楽しみにしてたんですよ。あれ食べないと年が明けた気がしなくて」と懐かしそうに微笑む。その顔を見ていた由香は、ふと思いついて、「みんなで作ればいいんじゃない?」と言い出した。

「え? みんなで?」と母が少し戸惑うと、由香は「だって、お母さん一人が大変なら、私たちも手伝うし、きっとお父さんもそれを聞いたら少し元気になってくれるかもしれないよ」と続ける。亮も「そうそう、僕も時間のあるときは手伝うよ。材料の買い出しとか力仕事くらいはできるから」と乗り気だ。

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