和菓子の灯がともるとき – 12月29日 後編

すると亮は少しムキになったように、「そうか…。でもなんとかならないのかな。中止って決まってても、やり方を変えれば小規模でもできるかもしれないじゃん」と言い出す。「簡単じゃないよ。商店街組合の人だって、もう諦めモードだったし」と由香が言うと、亮は納得いかない様子で「諦めるのは簡単だけどさ、そうやって何もしなかったら、この町はもっと寂れるだけだろ?」と声を強めた。

由香は、亮の気持ちが痛いほど分かる反面、自分の胸の内にある不安を素直に吐き出したくもなる。「でも、昔みたいなにぎわいはもう戻らないかもしれないよ。期待ばかりしても、結局誰も来ないで終わったりしたら辛いじゃない」と言葉を返す。すると亮は、はっきり苛立ちを含んだ声で、「そうやって最初から弱気になるのは、なんか違うと思うんだけど。おまえは父さんの店を再開したいんじゃないの? だったら、もっと一緒に考えてくれてもいいだろ?」と迫ってきた。

「私だって何とかできたらいいって思ってるよ。でも、父の回復だってまだ先が見えないし、私も東京に戻らなくちゃいけないし…。簡単に割り切れないから、もどかしいんだよ」と由香の声も少し上ずる。ここ最近、父の容態や店の将来だけでも気を揉んでいるというのに、亮はまっすぐな情熱をぶつけてくるからこそ、心が揺さぶられてしまう。

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