和菓子の灯がともるとき – 12月29日 後編

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12月29日 前編|後編

担当者はため息まじりに、「そうなんだよ。人手も予算もないし、若い人も都会に出ちゃって戻ってこないしね。続けたくても難しいのが現実だよ。去年まではなんとかやってたんだけど、見合わせるしかなくて」と嘆くように言う。その言葉に由香は、「でも何かできないんですか? 大晦日やお正月だけでも、ちょっとしたイベントとか…」と訊ねる。しかし担当者は苦笑いして、「それはこっちだって望んでるさ。でもね、役員も高齢化してるし、若手の意見を集める場すらないんだ。お父さんが元気だったころは、夏目堂もよく協力してくれたけどなあ」と話を締めくくった。

その瞬間、由香は亮が言っていた「地元の魅力を活かす」だの「イベントを企画する」という話を思い出した。もし父が店を復活させて、亮と協力して何か盛り上げられたとしたら、今とはちがう未来が開けるのかもしれない。かといって、由香一人でどうにかできる問題でもない。心の中で複雑な気持ちを抱えたまま、担当者と別れて家路についた。

夕方になって、母に頼まれた買い物袋を持って帰宅すると、玄関先にはちょうど亮が訪ねて来ていた。「あれ、亮? どうしたの」と問いかけると、「ちょっと商店街の人と話してたら、由香の名前が出たんで。そっちに顔出してみようかなと思ってさ」と笑っている。由香は一通り買い物の用事を済ませてから、亮に「今年のカウントダウンイベント、結局中止なんだって。もう告知してあるみたい」と伝えた。

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