和菓子の灯がともるとき – 01月01日 後編

亮はいつになく真剣な表情でそう切り出す。由香は「もちろん、できる範囲で力になれたらいいなと思ってる。お父さんの店の再開も、いずれ本格的に考えないといけないし」と答える。そのとき、亮はふっと手を差し出して、「一緒に頑張ろう」と握手を求めた。由香はほんの少しためらったあと、その手を握り返す。指先に伝わる体温が、明るい未来への小さな兆しを感じさせた。

「私、いつかまた都会に戻るかもしれないけど、地元を盛り上げる手伝いは続けたいと思ってるんだ。今まで故郷にあんまり貢献してこなかったし、夏目堂で育った身としては、やっぱり父や母の大事にしてきた場所を守りたいなって思うようになったの」

そう口にすると、亮は「それでいいんじゃない? 都会にいようと地元にいようと、やれることはいくらでもあるから。俺は由香が地元にいてくれたらそりゃ嬉しいけど、無理は言わない。お互いの道をしっかり考えながら、協力できるところは協力し合えたら最高だよ」と返す。その言葉に、由香は心の奥底でほっと安堵する。地元に全部を捧げるか、都会でキャリアを積むか、そんな二択だけではなく、自分なりのバランスを探しながらやっていけるのではないか――そう思えるのだ。

再び階段を下り始めると、下のほうで父と母が待っているのが見えた。母が「こっちよ~」と手を振り、父はゆっくりと気をつけながら立っている。改めて四人が合流すると、「おみくじでも引いてみる?」という母の提案に賛同し、少しだけ神社の境内を回ってみることになった。正月の雑踏と新鮮な冷たい空気の中、人々の笑い声やお囃子のようなBGMがどこからか聞こえてくる。由香はそんな風景を見渡しながら、「今年は大きな変化があるかもしれないけど、みんなで頑張ればきっと乗り越えられる」と静かに決意を固める。

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