和菓子の灯がともるとき – 01月01日 後編

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父がわずかに後ろからそっと肩を支えてくれたような気がして振り向くと、にこっと笑っている。由香は照れくさそうに「何?」と小声で返すが、父は言葉を発さずに首を横に振るだけだった。すれ違いや不満があったとしても、それは些細なことなのかもしれない――由香はそう思うようになる。いま大切なのは、父が健康を取り戻して、また少しずつ和菓子作りに向き合えるようになること。和菓子を待ってくれる人たちがいて、家族みんなが笑って過ごせる日々を少しでも長く続けること。その思いを強く感じる初詣だった。

一通り参拝を終え、参道を下り始めた頃、亮が「ちょっといい?」と声をかけてくる。由香は「うん」と頷き、父と母に「先に下で待ってて」と言ってから、亮と二人で神社の階段のわきに立ち止まる。階段には初詣の人々が上り下りしているが、それぞれ新年の空気を楽しんでいるため、二人の会話に気を留める人はいない。

「今年一年、俺はもっとイベントを企画したり、地元で何か面白いことをやりたいと思ってるんだ。商店街も、まったくやる気がないわけじゃないみたいだし、いろんな人と話してみようと思う。由香も、もし手が空いてるときがあったら手伝ってくれないかな?」

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