幻のオペラ座 – 第1話

第1話 第2話 第3話 最終話

芸術家の町、モンマルトル。その一角にある青年探偵、ジャックの探偵事務所の扉が静かに開かれた。入ってきたのは、顔を悲しみに曇らせた中年の女性、マリーの母親だった。彼女の頼みの内容はシンプルであり、同時に重く、ジャックの心を揺さぶった。失踪した娘、マリーを見つけて欲しいという。

マリーといえば、ジャックのかつての恋人。彼女は数日前から姿を見せず、最後には伝説のオペラ座へ行くと言っていたという。ジャックは瞳を閉じ、心中でため息をついた。あのオペラ座というのは、一度そのオペラを見た者は二度と姿を見せないとも言われていた。しかし、ジャックにとってマリーはただの依頼人の娘以上の存在だった。彼の内心は混乱し、独り言のように「マリー…」と名を呼んだ。彼女の行方を追う決意を固めると共に、自身の感情を抑えるのに必死だった。

マリーが最後に見たとされる場所、オペラ座へと足を運んだジャック。しかし、その場所にはただの空き地しか存在していなかった。周りを見渡すと、昼間には何もない場所に、夜になると美しいオペラ座が現れるという伝説を知る老人が一人、彼の目の前で微笑んでいた。



「夜になれば現れるさ。だが、その場所へ足を踏み入れたら、君も戻ってこられなくなるかもしれんよ。」老人は警告するように告げた。

夜。彼は昼間の老人の言葉を信じ、空き地を見つめていた。そして、それは突如として現れた。暗闇の中、まるで幻影のように現れるオペラ座。その光景は幻想的で、眩しいほどの美しさを放っていた。現れたオペラ座からは華やかな音楽が流れ、ジャックの心はとらえられていた。

彼はついにその大扉を押し開け、内部へと足を踏み入れた。目の前に広がるのは、華やかなシャンデリアと紅いカーペット、そして壮麗な舞台。それは彼が今まで見てきたどんなものとも異なる、別世界のような美しさだった。

そこから始まったのは、伝説のオペラ座の謎と、愛するマリーを取り戻すための戦いだった。ジャックはその重厚なカーテンを押し開け、自身の宿命と向き合うことを誓った。

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