壮麗な舞台、煌びやかなシャンデリア、そして至る所に溢れるオペラの音。ジャックはオペラ座の内部に足を踏み入れ、驚愕とともにその雰囲気に圧倒された。伝説のオペラ座は夜にだけ存在すると言われ、その世界が眼前に広がっている。彼は周囲を見渡し、マリーの存在を感じ取ろうとしたが、まだ彼女の姿は見つけることができなかった。
彼はまず、オペラ座のスタッフたちや出演者たちから情報を得ることを試みる。それぞれの人々は彼の質問に答えるが、それはどこか遠い目をしていて、まるで自分たちがどこにいるのか、何をしているのかを忘れているかのようだった。しかし、彼らの中にはマリーを知らないという人はいなかった。
オペラ座は時間の経つのを忘れさせるような場所だった。ジャックはその奇妙な空気感に戸惑いつつも、マリーの行方を追い求めた。マリーが見たとされる舞台、彼女が見つめたとされる観客席、彼女が聴いたとされるオーケストラの音。それぞれを追体験することで、彼女の存在を感じ取ろうとした。
夜が更けてゆくと、オペラ座は一層幻想的な雰囲気を醸し出した。ジャックはその中を歩き回り、マリーの存在を感じ取ろうと努めたが、彼女の姿は未だ見つからない。しかし、彼はその中で一つの異変に気付く。オペラ座の中には時計が存在していなかった。そして、外の空も、まるで時間が止まっているかのように夜のままだった。
次第にジャックは気付いた。自分がオペラ座に足を踏み入れてから、時間が全く進んでいないという事実に。そして、その真実に向き合うことで、彼は新たな決意を固めた。時間が止まったこの世界から、マリーを取り戻すという決意を。
それはある意味で、彼にとっての新たな挑戦だった。時間が止まった世界、そしてその中で踊るオペラのスターたち。彼らが、そしてマリーがどうしてこの世界にとらわれ、現実世界に戻れなくなったのか。その真実を知るために、ジャックは再びオペラ座の扉を開けた。
