前編 後編
川上純一は、日常に対する飽きから逃れるべく、ジャーナリストとしての生活に飛び込んだ。新聞記者としての彼の日々は、探求と文書化の繰り返しで満たされていた。難解な事件や様々な人々の物語を書き連ねる中で、彼は誰かの生涯を切り取り、それを文字にする醍醐味を覚えていた。
しかしその日、彼が受け取った一通の手紙は、彼の安定した世界を一変させる。それは、すでに5年前に自殺したとされる有名な小説家、石田真樹からのものだった。彼の作品は数々の賞を受賞し、死後も多くの人々に愛されている。
川上がその手紙を開くと、そこには石田の特徴的な筆跡で、奇妙な内容が書かれていた。彼はまだ生きているという言葉と、何か重大な秘密についての暗示。更には、それを解読するための暗号が記されていた。
驚きと混乱が川上を襲う。これが偽物であるとすれば、なぜ誰かがこんな事をするのか？ しかし、これが本物であるとすれば、彼はなぜ死んだと偽るのか、そして何が彼をそこまで追い詰めたのか？
川上は初めて、彼が抱えていた真実に向き合う勇気を試される。彼は暗号解読に詳しい友人の千葉に連絡を取る。千葉は石田の作品のファンでもあり、川上の友人として、その真実を知りたいという気持ちを共有していた。
千葉は川上に、暗号を解くためには石田の小説を読み解くことが必要だと提案する。それは石田の作品が多数存在するため、一筋縄ではいかない作業だったが、川上はそれに応じる。それぞれの作品からは石田の哲学や価値観、さらには彼の人生観が滲み出ており、その一つ一つが川上を深く引き込む。
川上と千葉は夜な夜な暗号解読に勤しむ。その過程で、彼らは石田の人間性や彼が抱えていた葛藤を知ることになる。それぞれの作品は彼の心の一部を表していた。そしてその深層には、彼が抱えていた秘密が隠されていたのだ。
そんなある日、川上は石田の一つの小説に、手紙の暗号と繋がりそうな部分を見つける。それは一見、何気ない描写だったが、そこにはある事件の暗示が隠されていた。その暗示を追っていくと、それは5年前、石田が自殺したとされる前に起こった、一つの不可解な事件につながっていた。
川上と千葉の探求の旅は、これから始まる。川上はその手紙が導く真実への道を辿る。そこには予想外の真実が待ち受けていた…。