月夜の影 – 第一章:不吉な予兆 前編

第2話: 伝説の語り部

事件の翌日、風間は再び寺院を訪れた。寺院の住職は、風間が昨夜の事件について尋ねると、深刻な表情で古い伝説の話を始めた。住職によると、この寺院には新月の夜に現れる一つの影にまつわる伝説があるという。その影が現れる夜には、必ず何らかの不幸な事件が起こるとされていた。

住職は、この伝説が数百年前から伝わっており、過去にもいくつかの不可解な事件が新月の夜に起きていたことを語った。例えば、ある年の新月の夜には、寺の宝物が盗まれ、また別の年には、重要な経文が失われたという。それらの事件はすべて、その夜に現れたと言われる謎の影によるものだと住職は言った。

風間はこのような超自然的な話には懐疑的で、科学的根拠を重んじるタイプだった。しかし、昨夜の事件の奇妙な状況と伝説の内容がどこかで結びついているように感じられ、無視できない興味を抱いた。彼は住職に、その伝説が始まった具体的な出来事や、過去に起きた事件の詳細をさらに尋ねた。

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