聖夜に注ぐレクイエム – 12月17日

「確証はありません。ただ、この事故をきっかけに彼女が一時的にピアノをやめていたという記録があります。それ以降、彼女が再び注目を浴びるまで数年の空白期間があるんです。」

「空白期間か……。」

陸は怜子の楽譜を再び取り出した。よく見ると、楽譜の隅に小さく名前のようなものが書き込まれている。「篠原」と読めるその文字は、事故で亡くなった生徒の名前リストに載っていた一人と一致していた。

一方、片桐悠人は、独自に怜子の過去を掘り下げるべく、彼女が通っていた音楽学校の旧校舎を訪れていた。火災後に閉鎖された校舎は今もそのまま残されており、荒廃した様子が当時の惨事を物語っていた。

「ここで何があったんだ……。」

悠人は古びた校舎の前に立ち尽くしながら、ポケットから楽譜の写真を取り出した。怜子の「レクイエム」の楽譜には、音符や記号以外にも細かい書き込みがあった。その中には「篠原」という名前以外にも、別の文字列が隠されていることに気づく。

「もしや……。」

悠人は楽譜をじっと見つめながら、頭の中で文字列をつなぎ合わせていった。それは暗号のように複雑だったが、徐々に浮かび上がってきたのは、「助けて」という言葉だった。

「助けて……? 誰に向けたメッセージだ?」

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