夜明けのペンダント – 第1章: 第1話

「失礼を恐れずに申せば、私はこのペンダントを再び日の目にさらし、白浜を新たな繁栄へと導く覚悟でおります。漁師の高橋航さん──発見者のご勇気に、改めて拍手を」

高橋航は漁師姿のまま大きく一礼し、頬をやや紅潮させてからペンダントに目を落とす。彼の両手は揺れるランプの光に照らされ、震えがほんの一瞬だけ走った。

「……ただ、私はこの石が何をもたらすか、まだ確信がありません。どうか皆様も、くれぐれもお気をつけください」

航の言葉に、会場の空気が再びざわついた。ワイングラスを掲げた顧問弁護士が落ち着いた声で話を切り替える。

「さて、今夜は祝賀の宴。美酒と佳肴をご用意しておりますので、どうぞごゆるりとお楽しみください」

社交的な言葉が交わされる中、演奏会の弦楽四重奏が重厚な調べを奏で始めた。大理石の床に音が反響し、貴族の饗宴を思わせる華やかさを創り出す。

──そのとき、天井のシャンデリアがかすかに揺れた。演奏者のバイオリン奏者が慌てて音を止め、ヴァイオリンを抱えたまま見上げる。やがて会場全体が、不意に訪れた揺れの余韻に包まれた。

「地震か?」

「そんなはずはない」

誰かが囁き、壁に掛けられた古い絵画の額縁もわずかに揺れた。その瞬間——

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