夜明けのペンダント – 第1章: 第1話

序章:第1話第2話 第1章:第1話|第2話

館の大扉が重々しく開かれ、シャンデリアの光が大広間を金色に照らし出す。深い紺色のスーツに身を包んだ地元実業家・和田慎一は、腰の傾いた背筋を伸ばし、誇らしげに集まった来賓たちを見渡した。雨雲は遠ざかり、満月を隠していた黒雲の切れ間から、わずかな月光が差し込んでいる。

「皆様、本日はお忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。──かの伝説の宝石、『夜明けのペンダント』が、ついに我が町に姿を現しました」

和田がゆっくりと歩み出し、ガラス張りの台の中へ手を伸ばす。台の上には、砂に埋もれて発見されたばかりの小箱が開かれ、その内部で薄紅の宝石が妖しく光を放っていた。集まった町長や企業幹部、金融界の重鎮たちは息を呑み、ざわめきが一瞬だけ宴席を支配した。

「これを手にした者には、繁栄と栄光が約束される──はずでしたね」

「──しかし、ご存じの通り、過去には悲劇も生み出した。呪いと呼ぶ者もいる」

町議会議長の田口が低い声で呟き、隣りの町長が頷く。和田はそれを意に介さず、続きを促すように手をかざした。

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