異世界冒険者ギルドの日常 – 第1章:前編

 慌てた瞬間、背後の書架から帳簿が自動で飛び出し、ページが光って開く。頭の中に情報が流れ込み、瞬時に計算結果が弾き出された。

「《在庫管理魔法〈エクスセル〉》……!」

 女神から聞いた“職業適性スキル”が発動。表計算のアイコンが脳裏に走り、数字が自動整列される。おかげで列の進みはスムーズ、小一時間で未処理がゼロになった。

「すごい、こんなに早く終わるなんて!」

 セルマが猫耳をぴこぴこ立てて驚く。

「前の新人は昼過ぎまでかかってたにゃ」

 悠斗は照れ笑いしつつも、久々に“仕事で認められる”快感を味わった。

 しかし休憩の鐘が鳴るや否や、扉が激しく開く。

「おい受付! 俺たちのクエスト報酬、まだ振り込まれてねぇぞ!」

 現れたのは筋骨隆々の斧戦士たち。腕組み隊長がドスの利いた声でカウンターを叩く。

(き、来たかクレーム対応……!)

 前世で鍛えた“土下座なし謝罪テク”が無意識に発動する。

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