「わあっ、こんなの食らったらペチャンコだぜ」
私は《エクスセル》で罠耐久度と周囲の魔力流を計測。石柱内部に魔力通路がぶつかり、配管に余計な圧力がかかっていることが分かった。
「石柱を無理に壊すと逆圧で配管が裂ける。ティリア、上部支点を狙い撃って落下エネルギーを外に逃がしてくれ」
「任されたわ」
弓弦が鳴り、矢は石柱支点へ真っ直ぐ飛ぶ。カシュンと鈍い音。石柱は一歩分ずれて地面に静かに転がった。魔力流量、安定。
その先のホールへ出ると、壁面には歯車状の意匠と古代文字。中央には円形の制御盤があり、淡く赤い脈動を繰り返していた。
「これが魔紋炉の中枢部。写本で見た通りだよ!」
リリィは目を輝かせ、工具を取り出す。
「動かすなよ、ここは見学だけだ」私は念を押す。
だが制御盤に刻まれた数値を読み取った瞬間、背筋が凍った。
――予定エネルギー出力の二倍。しかも外部からの転送魔力が波状的に流入している。
つまり、誰かが“別ルート”で魔力を注ぎ込み、炉を限界近くまでブーストしているのだ。
「データが証明してる。これは事故じゃなく意図的な改竄だ」
私の呟きにティリアが眉をひそめる。
「じゃあ危険なのはこれからね」
次の瞬間、通路側から石壁がゆっくり閉まりはじめた。


















