異世界冒険者ギルドの日常 – 第7章:前編

 夕刻の食堂。木造梁に吊られたランタンが揺れ、名物“ハチミツ照り焼きウサギ”の甘い香りが漂う。テーブル席では新人たちが“日替わり定食隊”を囲み、武勇伝の続きをねだった。

 「王都で無限予算をゼロにしたってホントですか!?」

 「どうやって∞を数字に収めるんです?」

 ティリアは困り顔で矢筒を抱え、ガルドは得意げに大剣を机へドンと置く。リリィは少年たちに歯車入りの小瓶を配り、即席算盤を作って見せた。

 私は笑って答える。

 「魔法でも剣でもないよ。“締切”と“決算”――どんな数字も必ず終わりがあるって教えただけさ」

 「それって魔法より怖い!」新人の一人が目を丸くし、食堂は爆笑に包まれた。

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