楽園の背信

平凡な高校生のあかりは、何も特別なことがない日々を送っていた。友達と遊んだり、自宅の庭の花を水やりしたりと、彼女の日常は穏やかで、特に大きな夢も持っていなかった。そんなある日、彼女は不思議な光に引き寄せられ、その光を追いかけて逃げ込んだのは、まったく未知の世界『イリス』だった。

この世界は、まさに夢のような楽園。色とりどりの花々が咲き乱れ、青い空にはたゆたう雲が顔を出している。幻想的な生き物たちが行き交い、訪れる者に微笑みかけてくれる。その美しい景色に心を奪われたあかりは、まるで別世界に飛び込んだような気持ちで胸が高鳴った。

「ここ、すごい!まるでおとぎ話みたい!」

彼女はこの新しい世界での冒険に心躍らせ、すぐに多くの友達を作った。彼女たちはみんな不思議な力を持つ魔女だった。あかりもその仲間に加わり、日々の冒険を楽しむ。

彼女たちは草原を駆け回り、魔法の秘密を学び、太陽の下で大笑いした。まるで永遠に続く楽しい日々を生きているように感じられた。しかし、そんな明るい日常の裏で、イリスには「ダークロード」と呼ばれる悪しき者が存在した。彼は暗い影をもたらし、楽園の調和を蝕んでいたが、あかりにはその存在は全くの無関係だった。

日が経つにつれ、あかりの仲間たちが次々とダークロードの魔の手に狙われ、姿を消していく。

「なんだか最近、あの子が見かけない気がする。どうしたのかな?」とあかりは心配していたが、その瞬間の嬉しさの方が勝り、遊びに夢中になっていた。

楽しい日々が続く中、あかりはますますこの世界に没頭していく。彼女は心から笑い、自由を謳歌し、果てしない冒険に明け暮れていた。しかし、彼女が仲間を失っていることに気づいていたのは、ただ一人、彼女を心配してくれる存在の友達だけだった。

その友達は、かつての仲間たちを想い、ダークロードに立ち向かう組織を立ち上げ、あかりを引き戻そうとしたが、あかりは彼女の心のどこかで、その誘いを拒否していた。

「何も心配しないで。私は今、幸せなんだから。」と、彼女はいつも笑顔で言っていた。

しかしある日、彼女はまるで運命に導かれるように、ダークロードの居城に迷い込んでしまった。

そこでは、彼が狙っていた「特別な力」を持つ少女を巧みに操り、影の中で舞い踊っていた。

気が付くと、あかりは自分の心を支配され、その瞬間からダークロードの手先となってしまった。見覚えのある仲間を見つけるたびに、彼女はその悲劇を運命と共に呪いながら、悪の手に加担することを許してしまった。

「助けて!あかり、私たちを思い出して!」彼らの痛みの叫びがあかりの耳に届くが、彼女の心は完全に冷たくなり、彼女自身が眼前の光景の一部であることを忘れてしまっていた。彼女はまるで身体を持たない幽霊のように、存在を消したように過ごしたのだった。

最後の瞬間、あかりはその痛みを自らに引き寄せた。彼女は心の奥底で、自らの無邪気さがもたらした悲劇を思い知らせた。

「私は、こんな楽園を破壊してしまった……」

かつての仲間たちは、彼女の背後で助けを求めてきたが、すでに遅かった。彼女の笑顔は消え、その時からあかりは一人虚空に漂う存在となった。彼女が愛した『イリス』は、今では永遠にダークロードの支配する暗闇の中に閉ざされてしまった。

それからというもの、アカリの名は伝説となり、彼女は楽園の背信者として語り継がれることとなった。 過去の自分を呪い、彷徨う彼女の姿は、長い間、楽園の影で生き続けるのだった。

この物語は、心の無邪気さが恐ろしい結果をもたらすことを警告している。時には大切なものを守るために、自身の無知を恐れなければならないのだ。

この楽園にかつて輝いていた笑顔は、今は翳り、忘却の彼方に消え去ってしまった。あかりの背信は、彼女自身をも孤独の影の中に押し込んでしまったのだ。

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