ニューロネットの夜明け – 第6章:意識統合の危機|後編

「私も考えてはいたわ。研究所へ潜入し、プロジェクト・シナプスの中枢を物理的に止めるしか道はないのかって。ただ……それで本当に全て解決するのかどうか」

エリカは自分の脳内チップに刻まれた幼少期の恐怖を思い出し、背筋が寒くなる。強烈な体験が彼女を突き動かしてきた一方で、この先に待ち受ける犠牲やリスクが計り知れないことも痛感している。

「エリカ、そんな悠長なことを言っている時間はない。早ければ数日以内に大規模実験が実施されるって情報もあるんだ。もしその段階に入ったら、文字通り後戻りはできなくなる。ネット上の工作だけじゃ間に合わない」

サイモンが声を荒らげると、周囲のメンバーも緊張した空気を漂わせる。従来の情報戦によって拘束者や逮捕者が出始め、インフォリベレーション内部でも「今こそ強行策に出るべきだ」という声が強まっていたのだ。

「わかったわ。私もここに至っては、研究所を叩くしかないと感じてる。けど、被験者たちを巻き添えにしないよう、作戦は慎重に考えて。万が一、大勢が犠牲になったら、それこそ権力の思うつぼになるかもしれない」

エリカの言葉に、サイモンは短くうなずく。彼も過度な犠牲を望んでいるわけではない。とはいえ、もはや物理的介入なしには計画を阻止できないと判断しているのだろう。

「じゃあ作戦会議を急いで開こう。可能な限りの情報を集めて研究所内部の構造、警備状況、そしてビアンカの動きを把握する。君のハッキングとミアの技術、それに俺たちインフォリベレーションの足と武器を総動員して、一気に踏み込むしかない」

サイモンがそう提案すると、エリカは息を呑みながらも小さくうなずいた。アジトには淡々とモニターを操作するミアの姿が見える。彼女は高まるサイバー攻撃をどうにか押さえ込みながら、合間を縫って研究所のセキュリティ情報をリサーチしているようだった。

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