ニューロネットの夜明け – 第6章:意識統合の危機|後編

情報だけでは状況を覆せず、協力者が次々に消えていく現実を目の当たりにし、エリカは改めて自分の限界を痛感する。ハッキングスキルがどれほどあろうとも、相手側の権力と資源は桁違いだ。今や敵は政府と大企業、さらに裏で軍事関連の力まで動いている可能性が高い。その巨大な連合を崩すには、残された手段が極めて少ない。

「結局、私たちも物理的に動くしかないのね……」

エリカは脳内チップをオフにし、モニターを閉じて椅子の背にもたれる。心臓の鼓動が早まっているのを感じるが、不思議と覚悟が固まっていくのを自覚する。これが自分に課せられた責務なのだと、脳裏のどこかで諦めに似た決意が芽生えていた。

こうして、情報戦が激しさを増すなか、インフォリベレーションは最終的な攻撃——すなわち政府研究所への直接侵入を視野に入れ始める。大規模実験が行われる前にプロジェクト・シナプスを止めるためには、もはやハッキングだけでは足りない。エリカもまた、この苛酷な結論に同意せざるを得ない状況へと追い込まれていく。

アジトには、エリカの苦い表情とは反対に闘志を燃やす強硬派のメンバーの姿もあった。彼らは手慣れた様子で武器や爆破用の装置をチェックし、「やるなら一気にやるぞ」と拳を固めている。エリカはその光景にわずかな迷いを抱くが、いまや時間がない以上、強硬策なしにはビアンカを止められないだろう。

サイモンの眼差しは熱を帯びている。彼も多くの仲間が連行されるのを目の当たりにして、ついに腹をくくったらしい。エリカもまた、胸の奥にわだかまる恐怖と悲壮感を押し殺しながら、次なる一手へと足を踏み出そうとしていた。すべては、迫り来る意識統合の脅威を止めるために。

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