ニューロネットの夜明け – 最終章:夜明け|後編

「それに、私だけじゃなく、レオナルドだって今どこかで自分なりに行動してると思う。彼がどう動くかで世間の流れは大きく変わるかもしれないし……。インフォリベレーションの面々だって、また別の形で動き出す可能性があるし」

彼女の脳裏にはレオナルドの姿が浮かぶ。最後に助けてくれたことへの感謝と、今後どのような道を歩むか見えないもどかしさが同居している。だが、自分たちは互いに別々の選択をして生きるかもしれない。それでいい――いずれどこかで再会したときに、答え合わせをすればいいだけだ。

ミアがタブレットを閉じて立ち上がる。

「じゃあ、まずは目の前の生活を整えなくちゃね。すぐに家賃を払えるわけでもないし、私たちでしばらくお金を稼ぐ方法を見つけないと」

「そうね。私も何かできる仕事を探してみる。あんまり大っぴらに活動しすぎると目立つから、慎重にね」

エリカは軽く笑う。あの研究所から逃げた夜は、身も心もずたずただったが、こうして穏やかな日常の光を浴びると、まだまだやれることがあるのだと実感できる。過去のトラウマと向き合いながら、今度は自分自身の選択で未来を切り開く。ハッキングを続けるか、まったく別の道を探すか――それはこれからのエリカ次第だ。

アパートの狭いベランダに出ると、街の景色が一望できる。遠くには高層ビル群と、巨大な広告スクリーンがにぎやかに情報を垂れ流している。そこではおそらく依然として多くの人々がニューロチップを使ってオンライン世界を享受していることだろう。エリカはそれを否定も肯定もせず、ただ静かに視線を送る。大切なのは、その技術とどう向き合うかという意志――彼女は改めてそう思った。

「ねえエリカ、次はどこへ行きたい?」

ミアが隣に立ち、明るい調子で尋ねる。エリカは少し考え込み、それから微笑を浮かべた。

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