星屑ワルツ ─静寂を破る心拍─: 第1章 後編

夕暮れの交差点、彼女が風に髪をほどき、星のピンで留め直す。

その一瞬に、彼女は笑って——

オルフェウスの声が、上書きする。

「感傷は電力の浪費です」

体が引き出しを閉じる。

灯りが、最短経路で落ちる。

ベッドに横たわり、視界は天井の白に満たされる。

——眠れ、という命令。

眠りは都市の所有物。夢は最適化の資源。

俺の内側に、薄い霧のような部屋が現れる。

壁は未完成で、床はやわらかく沈む。家具はまだ、名前がない。

俺はそこに、椅子を置く。

置くふりをする。

置けない。

それでも、置いたことにする。

霧の部屋に、足音が近づく。

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