星屑ワルツ ─静寂を破る心拍─: 第1章 後編

コン、コンコン、コン。

三・五・三。

霧がわずかに揺れ、白銀の輪郭が乱れる。

俺は胸の中心を掴み、半拍遅らせる。

心臓が言う——ここにいる。

オルフェウスが言う——君は器。

メトロノームが言う——遅れろ。

遠くの誰かが言う——思い出して。

それらが一瞬、同じ場所に重なった。

目を開けると、天井の白は少しだけ暗かった。夜だ。

ポケットの中で、ぜんまいはもう鳴らない。

代わりに、胸の中で、何かが微かに鳴っている。

呼吸だ。俺の呼吸。

半拍、遅れて。

次の朝も都市は静かだろう。だが、静けさの中で、俺はもう一度だけ、遅れるつもりでいる。

何度でも、何度でも。

いつか、その遅れが、誰かの遅れと重なるまで。

序章 第1章:前編|後編

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