最後の証人 – 前編

前編 後編

第一章 「証人たちの消失」

雨が街を打つ夜、ジョンは自宅の書斎で資料に目を通していた。彼の目の前に広がるのは、依頼された裁判の資料群だ。被告人のリチャード・ハーヴィーは、有力な市議会議員でありながら、過去の犯罪容疑で訴えられていた。

警察はリチャードを、十年前に起きた一連の未解決殺人事件の主犯と断定。被害者たちは全て、リチャードの政策に反対する政治家や活動家たちだった。しかしながら、具体的な証拠は揃っていない。

「あまりにも強引な逮捕だ」とジョンは考えた。彼は弁護士として、この裁判をただの政治的な処刑だと感じていた。証人の証言こそが、リチャードの切り札になるはずだった。

しかし、証人たちは次々と行方をくらました。最初に消えたのはジョージ・ウィルソン、次にリサ・フランクリン、そして3人目のジェフ・モリスまで。警察は証人保護プログラムで彼らを隠していたはずなのに、一体何が起こったのだろうか。

「運命の女神は僕に微笑んでいないな…」ジョンは呟いた。彼の仕事は、証拠を見つけ、事実を明らかにし、そしてクライアントを無罪にすることだった。だが、現状ではそれが困難であることを理解していた。

まさか、自分が最後の証人になるなんて…。ジョンは冗談めかしてそう考えてみた。しかし、冗談でしかないと思っていたその考えが、後に真実となるとは、この時点では全く予想もしていなかった。



そんな中、突然の来訪者がジョンの元を訪れる。そこに現れたのは、警察の若き刑事であるアダム・クーパーだった。彼の顔色はいつもと違い、何か心配事でも抱えているかのようだった。

「ジョン、俺たちの保護下にいた証人たちは何者かによって行方をくらまされてしまった。」アダムは何とも言えない表情を浮かべながら、ジョンに告げた。「それだけじゃない、何者かがリチャードの不利な証拠を作り出そうとしているみたいだ。」

ジョンは目を見開き、アダムに言った。「証拠を作り出す?それは一体…」

アダムは首を振り、ジョンの言葉を遮った。「詳細はまだわからない。ただ、リチャードが無実だと信じるなら、真実を探し出すのは君しかいない。証人たちが何を隠していたのか、それを明らかにすることが、リチャードを救う唯一の道だ。」

ジョンは無言でアダムの言葉を聞き入れた。そして、何を隠していたのか、何を見つけ出すべきなのか、それを解き明かすための新たな闘いが、彼の前に広がっていた。

証人たちの消失と未解明の秘密。それはジョンが抱える新たな謎であり、彼を狙う陰謀の一端だった。だがジョンはその真実を暴くことを誓い、雨の夜、書斎の灯りをつけっぱなしにして、資料に向き合った。

それはまだ始まったばかりの戦いだった。