最後の証人 – 前編

第二章 「影の糸」

ジョンはアダムから得た情報を元に、証人たちが何を隠していたのかを探るための調査を開始した。まずは、失踪した証人たちの人となりを詳しく調べ上げることから始めた。その結果、全ての証人がリチャードと何らかの深い繋がりを持っていたことが明らかになった。それは、単に政策への反対という枠を超えていた。

ウィルソン、フランクリン、モリス、三人ともリチャードと共に慈善活動に関与していた。そして、それぞれが慈善活動のなかで異常な動きを見せていたのだ。それは公には明かされていない、何らかの秘密を隠しているかのように見えた。

ジョンは次に、彼らの失踪する直前に何をしていたのかを調査した。そのために、彼らが通っていた場所、会っていた人物、使っていた電話やメールの履歴などを洗い出す作業に取り掛かった。その結果、三人全てがリチャードの裁判直前に、一人の男と頻繁に連絡を取り合っていたことが分かった。その男の名前は、トーマス・エリオットだった。

エリオットはリチャードと同じく政界の人間で、リチャードの親友であると同時に、最大のライバルでもあった。エリオットと証人たちが何を話していたのか、何の繋がりがあったのか。それを探ることが、次なる課題となった。

そのために、ジョンはエリオットに会うことにした。直接会って話を聞くことで、何か手がかりを掴めるのではないかと考えたからだ。エリオットの豪邸に着くと、リチャードとは全く異なる雰囲気に圧倒された。豪奢で派手な内装は、エリオットの人となりを如実に表していた。



「ジョン弁護士、よく来てくれました。」エリオットは笑顔でジョンを迎え入れた。「何の相談でしょうか?」

ジョンは彼の質問を無視し、直接本題に入った。「エリオット議員、貴方はリチャードの証人たちと頻繁に会っていたようですね。何を話していたのですか?」

エリオットは一瞬驚いた表情を見せると、すぐに笑顔に戻った。「それは一体どこから得た情報なのですか、ジョン弁護士?ともかく、あなたが聞いていることは全て誤解ですよ。」

しかし、ジョンはその言葉を信じなかった。エリオットが何かを隠している。その確信が、彼の心に疑いを抱かせていた。それはまた新たな謎を投げかける結果となった。

ジョンはエリオットの邸宅を出た後、新たな思いを胸に秘めて、再び証人たちの調査に取り組むことにした。そして、そこで見つけた一つの手がかりが、彼に大きな希望をもたらすこととなった。それは、消えた証人たちが、リチャードとエリオットの共通の慈善活動で何か重大な秘密を隠していたという事実だった。それは、もしかしたらリチャードの裁判とも深く結びついている可能性があった。

一筋の光が見え始めたジョンだったが、その裏で彼を狙う影がさらにその範囲を広げていくことに、まだ気付かないままだった…。

前編 後編

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