赤い封筒 – 第2話

プロローグ 第1話

 翌日の午後、アキラはかねてから相談すると伝えていたシンイチに会うため、都心から少し離れた雑居ビルの一室を訪れた。古びたエレベーターを降りると、細い通路の先に「三上調査事務所」と手作り感のあるプレートが掲げられている。事務所の扉を開けると、ひんやりとした空気と整理整頓された書類の匂いが鼻をくすぐった。内装は簡素だが、壁際にはさまざまなファイルボックスや資料がきれいに並べられている。

 部屋の奥のデスクに腰かけていたのがシンイチだ。かつては敏腕刑事として鳴らした男らしく、鋭い目つきと鍛えられた体格が印象的だが、どこか疲労の色がうかがえる。アキラと視線が合うと、シンイチは微かに笑みを浮かべて椅子から立ち上がった。

「久しぶりだな。元気してたか?」

「なんとか。シンイチこそ、相変わらず忙しそうだな。」

「まぁな。ここ最近ちょっとバタついてる。でも、おまえが電話くれたときは驚いたよ。何か相談したいことがあるんだろ?」

 アキラは黙って鞄を下ろし、取り出した数通の赤い封筒をシンイチの前に置いた。そして今までの経緯をかいつまんで話す。半年ほど前から毎月届く赤い封筒のこと、不気味な詩が記されていること、それをどう扱えばいいか悩んでいたということ。シンイチは一通ずつ封筒の消印やカードの質感を確かめながら、真剣な表情で耳を傾けていた。

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