前編 後編
第一章 謎のレターコードの出現
閉ざされたオフィス、目の前に広がる無数の資料、そして掌には、エリカがこれまでに遭遇した中で最も挑戦的な仕事の依頼書があった。彼女の手の中にあるのは、その存在が囁かれ、数十年にわたり未解決のままであった「謎のレターコード」の解読依頼だ。これは、ただの一つの依頼ではなく、彼女の人生、キャリアを一変させるだろうという予感が彼女を包んでいた。
エリカ・ハミルトンは、国際的に評価された暗号解読士であった。彼女の手にかかれば、政府の機密情報から企業の暗号、さらには失われた古代文明の言語まで、何でも解読することができた。しかし、これまで彼女が取り組んできた暗号とは異なり、このレターコードは過去の未解決事件に関連していた。それは、1940年代から次々と世界各地で発見され、一部は古書店の奥底、一部は蔵書家の手元、また一部は古代遺跡から出土するなど、その出現場所もまた多種多様だった。
エリカは手紙を静かにテーブルの上に置いた。彼女の目は硬く、彼女の心は固く閉じていた。これは、ただの仕事ではない。それは彼女が感じていた。この仕事がエリカに与える影響は計り知れない。しかし、彼女の心に疑問が浮かび上がる。これがただの暗号であるならば、なぜこんなに過去の未解決事件が絡んでいるのだろうか?
エリカはふと彼女の父親を思い出した。彼は彼女が暗号解読士となるきっかけを与えてくれた人物であり、かつて自身も暗号解読の世界に身を置いていた人物だった。彼がいつも口にしていた言葉が頭をよぎる。「エリカ、全ての暗号には解き方がある。ただし、その解き方を見つけ出すためには、それが何を伝えようとしているのか、何を隠しているのかを理解することが重要だよ。」その言葉を思い出し、エリカは無意識のうちに唇を噛みしめた。
次に彼女が手に取ったのは、その「謎のレターコード」の写しであった。黒々としたインクで記された文字は、まるで遠い過去から彼女を見つめているようだった。その文字列は、複雑で、かつ曲がりくねっていた。何を意味するのか、一目見ただけでは全く分からない。しかし、それがエリカの前に広がる新たな挑戦であり、彼女が次に解読しなければならない謎であることは間違いなかった。
エリカは深呼吸をし、再び依頼書を手に取った。彼女は自分自身に問いかける。「私は何を求められているのだろう?何を隠すために、これほどの複雑な暗号が作られたのだろう?そして、私がこれを解読することで、何が変わるのだろう?」それらの疑問は、彼女の心を駆け巡り、彼女を新たな挑戦へと駆り立てる。
そして彼女が再びテーブルの上に手紙を置くとき、エリカの心はすでに決まっていた。彼女はこの「謎のレターコード」に立ち向かう決意を固め、その解読へと乗り出すことを決めていた。
こうして、エリカ・ハミルトンの新たな挑戦が、この閉ざされたオフィスから始まったのであった。