東京の片隅に佇む小さな書店「影のページ」。
この書店は、古本好きな人々に憩いの場を提供していた。しかし、その静かな外見の裏には、恐ろしい秘密がひっそりと隠されていた。
オーナーの田中は、中年の男性で、彼の沈んだ眼差しは、誰もが容易に踏み込むことのできない深い闇を抱えていた。書店は一見普通だが、書棚の奥深くにひっそりと眠る禁断の本が、彼の心に重くのしかかっていた。
ある日、大学研究のために資料を探していた真希が「影のページ」を訪れた。
彼女は、ふとした拍子に田中の持つ書籍に目を奪われ、彼との会話にあっという間に引き込まれてしまった。田中は一見無口だったが、彼の知識は豊かで、古本の歴史を語る姿に真希は心を奪われた。
しかし、書店を訪れるたびに真希は不気味な緊張感を感じていた。
夜遅くに書店を後にしようとすると、街の静けさが異様に感じられた。周囲の影がより一層濃くなり、彼女の心に不安が募るのを感じた。田中を通じて知った本の数々が、ただの書物ではないことを直感していたからだ。
一週間ほど通い続けるうちに、真希は田中に尋ねた。「最近、この店には何か変わったことはありませんか?」
すると田中は、微かに震える声で答えた。「この街には、何か恐ろしいものがいる。私もそれを避けようとしているのだが……」その言葉は、真希の心に不安を植え付けた。
次第に真希は、田中が何かに怯えていることに気付いた。彼の発する言葉や表情には、ただ者ではない過去が隠されているのだ。
ある晩、書店の奥にある古い書籍の中から、真希は不意に一冊の禁断の本を見つけた。
その本には、かつて消えた人々の記録がのっており、田中が何よりも恐れている存在を知る手がかりがそこにはあった。
それは「運命の書」と呼ばれ、持ち主の人生を操る力を秘めているという。真希はその本のことを田中に話そうとしたが、彼は彼女の手を取って止めた。「絶対に触れてはならない。本当に恐ろしいことになる。」
しかし、好奇心に駆られた真希は、どうしてもその本の真相を解き明かしたいと思った。
数日後、友人から「運命の書」の噂を耳にしたことで、真希は更にその本に興味を持った。価値ある何かがそこに眠っていると感じたからだった。
田中は、真希がその本について探求し続けることに不安を抱き始めたが、同時に彼女が恐怖を経験しないようにしたいとの心情もあった。
ある夜、真希は古い書と向き合っていた。
不安と好奇心が絡み合ったその瞬間、空気が凍てつくような感覚が彼女を包んだ。そのとき、書店内の灯りが突然消えた。真希は思わず心臓が高鳴り、背後に何者かの気配を感じた。
猛然と振り返ると、薄暗がりの中から不気味な影が迫っていた。瞬間、彼女の目の前で田中が現れ、体を盾にして影を遮った。「真希、こっちに来てはならない!」
彼は何かに必死で抵抗しているようだった。それはもはや、書の中に封印された恐ろしい存在が蘇る瞬間であった。
真希の胸の鼓動が早まり、彼女は田中を信じて後ろに下がった。
彼女の心の中で「運命の書」が果たして正しい道を示してくれるのか、それとも恐怖の源となるのか、分からないままでいた。
時が経つにつれ、彼女はその本の真実を知りたいと願うが、自らが巻き込まれる運命に恐れをなしていた。
そして、書店に通ううちに、真希は徐々に田中との絆も深まっていった。その中で、彼が抱える過去と真実の恐怖が徐々に明らかになっていく。それは彼自身も逃げられない運命の書であり、そして真希もその渦中に取り込まれつつあった。
「運命の書」を巡る謎が彼女の心に迫るだけでなく、街全体に亘る謎に気がつく。そして帰れない恐怖の中で、果たして彼女は真実を見つけ出せるのか。
田中の秘密と、失われた過去の真実は、彼女の手の中にどれほどの影響を及ぼすのか。恐怖とサスペンスが混在する物語の行方は、彼女自身が選ぶ運命にかかっているのだ。
書店での出会いが、果たして彼女の人生を良くも悪くも変えてしまうのか。
運命に翻弄される彼女が最後に選ぶ決断とは……。