静かな山間の町、さくらは14歳の少女。小さな部屋に散らばった絵具と、積み上げられた本が彼女の唯一の世界だった。内気で、人とのコミュニケーションが苦手なさくらは、友達がほとんどいなかった。彼女は、日が暮れるまで山道を散歩しながら、心の中で物語を描くことを楽しみにしていた。
そんなある日のこと、いつもの散歩道で古びた日記を見つける。茶色の革で覆われたその表面は、時の流れによって磨耗していた。
好奇心が勝り、さくらは日記を手に取って開いてみる。ページをめくると、様々な出来事が綴られていた。日記の持ち主は、かつてこの町に住んでいた少女、その名も「ひな」だった。彼女の手書きの文字は、当時の思いと恐怖が交錯しているようなものだった。
「この町には悪しき秘密が隠されている。私はその影に囚われている…」
さくらは急に身震いを感じた。日記を読み進めるにつれて、ひなの周りに起こった不思議な出来事や、謎の影についての記述が増えていく。彼女にはこの町の過去を知りたいという衝動が芽生え、少しずつ調査を始めることに。しかし、日記の内容が進むにつれ、恐ろしい出来事の数々が思い起こされ、さくらの心には不安が押し寄せてきた。
町の人々はひなの名前を口にすることを避け、「あの子のことは忘れなさい」というような雰囲気で包まれているようだった。友達に相談できず、さくらは一人で日記の真実を追い求めることになった。
避けがたい恐怖の中、彼女は毎晩夢を見た。その中では、ひなの無邪気だった頃の笑顔と、その後の悲しみが交互に映し出される。何度も繰り返される夢は、彼女に強烈なメッセージを送り続けていた。日記の中には、ひなが遭遇した不思議な影、そして彼女が抱えていた秘密が隠されているように感じた。
町の人々の視線が冷たくなる中、さくらの周囲で不審な出来事が起き始めた。友達が作れず孤独であった彼女には、さらなる恐怖が押し寄せていた。夜中に部屋の窓が軽く叩かれる音、学校での孤独、そして不安で消耗する日々。彼女は、「自分に何ができるのか?」という疑問を持ちながらも、進む道が見えなかった。
ある晩、さくらは再び夢を見た。夢の中で彼女は、ひなが持っていたという古い小物を見つける。目覚めた彼女は、その小物が実在することに気付く。どこかで見たような物体、それを探しに行かなければならないと強く心に決めた。
再び山道を歩く道すがら、さくらはひなの日記の内容を反芻しながら、周りの景色に目を凝らした。日記に書かれていた特徴的な場所を思い出し、少しずつ近づいていく。だが、道中には何かが彼女を見つめているような感覚が付きまとっていた。木々の間から無情に差し込む光が、さくらの心に不安感をかき立てた。
そして、ついに彼女は日記に記された場所にたどり着いた。古びた石の祠があり、その周りにはひなが残したと思われる小物やメモが散乱していた。心臓が高鳴り、さくらは恐れを感じたものの、恐ろしい思いを抱えながらも勇気を振り絞った。
祠の中を探っていると、彼女は不意に背後から視線を感じた。振り返ると、そこには影のように佇む誰かがいた。心臓が止まりそうな恐怖の中、影の正体は次第に明らかになっていく。一人の少女だった—ひなの姿。
「私を助けて…」
その言葉が、さくらの心を掴んで放さなかった。彼女は自分が何を選ぶべきか、本当に理解していた。ひなの祈りは彼女自身に向けたものであり、日記には彼女の運命が織り込まれていることを悟ったのだ。