潮騒のメロディー – 第2話

第1話 第2話

共鳴する心

放課後、悠は教室の隣で何か小さなメロディーが聞こえてくるのを感じた。その声は、どこか懐かしく、そして心に染み入るようだった。声の主を探しに行くと、廊下の隅で詩織が窓の外を見ながら、何かを口ずさんでいた。彼女の声には、深い哀しみと愛が込められていた。

彼女が歌っていたのは、母親が遺した歌詞の一部だった。悠はその瞬間、詩織に隠れた音楽の才能に気付いた。彼は彼女のそばに近づき、声をかけた。

「詩織、その歌は…」

詩織は驚きの表情を見せながら、悠を見上げた。「あ、先生…。これは、母が残した歌詞の一部です。」



悠は詩織を海辺に誘った。二人は岩場に座り、波の音を聞きながら、互いの過去や痛みを語り合った。詩織は母親の死後、音楽から遠ざかってしまったこと、それがどれほどの痛みをもたらしたかを悠に打ち明けた。一方、悠も自身の事故や音楽との複雑な関係を詩織に話した。

星空の下、二人の間には深い共感の絆が生まれていった。悠は詩織に、母親の遺した歌詞やギターを使って音楽を再開するよう提案した。

「詩織、君の声には特別な力がある。母さんが残した音楽と、君自身の音楽を組み合わせて、新しいメロディーを生み出すことができる。」

詩織はしばらく考え込んだ後、悠の目を真っ直ぐに見つめて言った。「先生、私…もう一度、音楽と向き合ってみたい。」

夜の海辺でのこの約束は、二人の新しい人生のスタートとなることを、まだ二人は知らない。しかし、その日、二人の心は深く共鳴し合い、新しい希望の光が灯り始めたのだった。