星の涙 – 第1話

淡い夜明けの光が、古びた廊下の床板をほんのりと染めはじめていた。まだ誰の声も聞こえない静寂の中、桜はほうきを手にそろりと歩みを進める。かすかなきしみ音に耳を澄ませながら、小刻みに揺れる星のモビールを目で追った。窓辺で揺れるガラスの破片は、まるで夜空の一番星のように揺れ動く。――私も、どこかで誰かを照らす存在になれるのだろうか。

──ガラリ。食堂のドアが開き、木島先生が明かりを灯した。

「おはよう、桜。今朝はずいぶん早いね」

小声で返すと、先生は優しく微笑み、立てかけていたほうきをゆっくり受け取った。

「今日はお当番の手伝いを頼んでもいいかい?」

桜はうなずき、先生と並んで調理台へ向かった。

食堂にはすでに三人の子どもが座っており、まだ半分眠気の残る顔でパンをかじっている。