星の涙 – 第3話

揺れる座席で、窓の外に広がる稲穂の海を見つめながら、桜はそっと手紙を取り出した。陽斗は興味深そうに覗き込み、二行の文字を指でなぞる。

「遠くから見守っています。星の涙を探して」

「母さんの声が、ちゃんとここにある――」

桜が呟くと、陽斗は肩を叩いて励ます。

「大丈夫。君がここまで来られたのは、勇気と想いがあるからだ」

列車ほどの速さではないが、バスのエンジン音が心地よく胸に響く。二人は互いの名前や、孤児院での思い出を語り合いながら、次の目的地へと向かう。小さな緊張と大きな期待が交錯し、朝の光が二人の背中を優しく照らす。

やがて見知らぬ町の停留所に到着し、ドアが静かに開く。

「一緒に行こう」

陽斗が差し出した手を、桜は迷わず握り返した。二人は並んでバスを降り、次なる旅路へと踏み出す。靴底をかすかに鳴らす石畳の感触が、新しい物語の幕開けを告げていた。

第1話 第2話 第3話

タイトルとURLをコピーしました