星の涙 – 第3話

「うん、ただいまを言える日まで、絶対に諦めない」

一本道を歩くこと数分、ぽつんと立つバス停にたどり着く。周囲の田園風景が凛とした空気の中に溶け込み、足元の草いきれが朝の冷気を和らげる。しばらくして、小さなバスが砂ぼこりを巻き上げながら近づいてくる。桜は深呼吸し、ベンチの隅に腰をおろした。

「君も、このバスに乗るのか?」

突然、隣に声がかかった。見ると同年代の少年が、少し緊張した面持ちで笑っている。手には色あせた家族写真を握りしめていた。

「はい……母と父を探す旅に出ようと思って」

桜が答えると、少年は静かに頷いた。

「俺も同じだ。俺は陽斗。最後に会ったのは小学校のころで、場所も思い出せないんだ」

バスが停車し、ドアのベルが優しく鳴る。二人は同時に立ち上がり、小さな荷物を抱えた。桜が手紙の布袋をさりげなく見せると、陽斗の目が輝いた。

「星の涙か……面白そうだね。俺も手伝わせてほしい」

桜は一瞬驚いたが、すぐに笑顔で頷き、二人は並んで乗り込んだ。

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