星の涙 – 最終話

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深い夜を越え、朝日が「みずうみ寮」の門を優しく照らす頃、桜は母・千鶴とともに庭に佇んでいた。木島先生が両手を広げ、「おかえり」と微笑む。子どもたちが一斉に集まり、駆け寄る。

「本当にお母さんなんだね!」

「ねえ、お姉さんみたいに遊んでくれる?」

千鶴は少し照れくさそうに目を細め、屈んで子どもたちの輪に入る。桜はそっとスケッチブックを開き、一ページずつ旅の記録を見せた。ページには屋根裏の手紙、深山郷の星形、失われた欠片への涙、紗枝のアトリエで描いた「心の護符」が並んでいる。

「桜、すごいね。こんなにたくさん冒険したんだ」

「うん。これが私の強さの証なんだよ」

子どもたちは目を輝かせ、桜をねだるように囲む。千鶴は微笑みをこらえ、桜の肩にそっと手を置いた。

――家族とは、血だけではない。支え合う人たちがいてこそ、私はここに立っていられるのだ――

昼下がり、縁側では陽斗と紗枝が待っていた。桜は深呼吸し、二人に封筒を手渡す。

「ありがとう、陽斗、紗枝さん。本当に助けられた」

紗枝はスケッチブックを広げ、「ここに描き加えてごらん」と促す。桜は母との再会の場面を一枚に描き、陽斗は家族写真を小さなスケッチに写して紋章のようにあしらった。

「これで、私たちの絆も絵に残せる」

陽斗が笑い、三人はしばし得意げに見せ合う。

夕暮れ、桜は一人、屋上の星のモビールのもとへ向かった。風に揺れる金属片が淡い影を落とし、遠くで子どもたちの楽しげな声が聞こえる。桜は母からもらった星形ロケットを開き、小さな写真をそっと取り出した。

「私は強くなれた。母の愛と、陽斗や紗枝の言葉があったから」

窓から差し込む夕陽がロケットの銀面をきらめかせる。スケッチブックを膝に開き、最終ページに小さく「家族の光」と書き添える。深呼吸して、遠くの山並みを見据える。胸にはもう、失われるものなど何もない――確かな想いと、新たな未来が刻まれていた。

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