聖夜に注ぐレクイエム – 12月15日

失踪の夜

12月15日、街中がクリスマスのイルミネーションで彩られ、寒空の下、人々の期待が高まる中、地元の音楽ホールには早坂怜子のクリスマスコンサートを楽しみにする観客が集まっていた。天才ピアニストとして名を馳せる怜子は、この街の誇りともいえる存在であり、彼女が披露する新曲「レクイエム」は多くのファンにとって待望の一曲だった。

しかし、開演時間が迫るにつれ、会場の裏では不穏な空気が漂い始めていた。ホールのスタッフが怜子の控室を訪れると、そこには彼女の姿がなく、連絡も取れない状況が続いていた。控室のドアはしっかりと閉まっており、荒らされた様子はない。まるで最初から誰もいなかったかのように静まり返っていた。

「早坂さんはどこに行ったんだ? もう開演10分前だぞ!」

ホールの責任者である三浦真知子は焦燥感を隠せず、スタッフたちに指示を出していた。周囲では観客が席について待ち始めており、事態の深刻さを感じる人間はまだ限られていた。

「電話も通じませんし、家にもいないようです。誰も彼女を見ていないと……。」

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