星の涙 – 第2話

第1話 第2話

夜の静寂を破るのは、揺れるランプの炎だけだった。桜は小さな丸机の前に座り、手元のランプをそっと点した。淡い光に照らされた紙の縁が、昨夜見つけた手紙の輪郭を浮かび上がらせる。指先で封を切り、緊張に震える手でそっと開いた。

――桜へ。

――あなたを守りたくて、遠くから見守っています。

――星の涙を探して。

その三行を読むたびに心臓が高鳴り、頬を涙が伝った。「星の涙……?」 言葉の意味はまだ分からない。だが確かなのは、この短い文章が母の声として、自分の奥底に響いていることだった。桜は紙を胸に抱きしめ、夜風の音を聞きながら、母への想いと未知への好奇心に体が震えるのを感じた。

翌朝、桜は手紙をそっと袖口にしまい、孤児院の小さな図書室へ向かった。木島先生が本棚の前で待ち構え、「どうした、桜?」と優しく声をかける。桜は言葉を選びながら手紙を差し出し、「星の涙って何でしょうか……?」と問いかける。先生は一瞬目を細め、古びた地誌と詩集を二冊抱えて差し出した。

「昔、この辺りには『夜空の星がこぼれ落ちた涙』と呼ばれる小石があったという伝承があるんじゃ」「伝承では、深い山の洞窟で見つかった青く輝く鉱石をそう呼んだらしいが、場所までは残っていない」先生の声は静かに重く、桜の胸にじんわりと染み入った。

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