大空の船 – 第1章 後編

そう言い捨てると、老人は扉を開けてアレンを工房の中へ招き入れる。アレンが入った途端、鼻を突いたのは油と金属の焼ける匂い、それから古い木材や錆びた鉄が混ざった独特の酸っぱいような香り。部屋は天井が高く、あちこちに配管やチューブが無造作に張り巡らされている。その一角には大小さまざまな歯車やバネ、金属片が山積みにされ、机の上には設計図らしき紙が散らばっていた。

「す、すごい……」

散らかった作業台を見回し、アレンは思わず感嘆の声を漏らす。まるで自分が書物の中で読んだ「秘密の研究所」みたいだと感じた。老人は黙って奥の作業スペースへと歩き、アレンを手招きする。

そこには蒸気エンジンらしきものや、見慣れない機械が組み立てかけの状態で放置されていた。配管の接続が中途半端な装置は、時折ぱしゅうと小さな蒸気音を立てている。アレンがじっとそれを見つめていると、老人は急に「あぶない!」と声を張り上げた。反射的に身を引くと、ちょうどその装置が暴走でもしたかのように内部から火花を散らし、軽い爆発音とともに煙が立ち込める。

「まったく、これだから調整を怠れないんだ。いいか、触るときは慎重にな」

老人は慌てた様子もなく、慣れた手つきでバルブをひねって装置を止める。アレンは咳き込みながら煙を払うが、その一連の動きに見とれた。自分とはまるで次元の違うところで機械を操っている。こんな風に、自分も何かを作り出せるようになりたいと強く思った。

「おじさん、これは……何を作ろうとしてるんですか?」

たまらずアレンが尋ねると、老人は「飛行装置の試作の一部だよ」とぽつりと答える。アレンの目が一層輝き出す。しかし、その次の言葉はとても悲観的なものだった。

「どれも失敗ばかりだがな。飛ぶための動力を工夫しても、大きさや重量、バランスが合わない。失敗作の山だよ」

そう言いながら、老人は壁際を指さす。視線を向ければ、確かに似たような形の装置がいくつも積まれていた。羽根のように見える金属板、砕け散ったプロペラ、焼け焦げた小型ボイラー。どれもが「空を飛ぶ」という目的を試みたが失敗し、そこに放置されているのだとわかった。

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