大空の船 – 第3章 後編

ライナスは「いいねえ!」と大きくうなずき、「なら、俺の旅の知識も役立つかもしれないぞ」とさらに声を弾ませる。

「俺は海図にも山岳ルートにも詳しいし、各地で手に入れた方位磁針や観測道具もある。航路の選定や天候の見極めなら、そこそこ自信があるんだ。どうだ、乗せてくれないか?」

アレンは迷うどころか、思わず笑みを返した。こうして立て続けに現れた二人が、まさしくアルバトロスに必要な技術を持っていると感じられるからだ。昔なら「怪しげな連中だ」と思ったかもしれないが、自分が空を飛ぶという時点ですでに十分怪しげだろう。この際、同じ夢に賭ける者なら大歓迎だ。

「ぜひ頼む。君たちみたいな人材がいてくれれば、空の冒険はぐっと現実味を帯びるはずだ」

アレンがそう言うと、リタもやんわりと笑って二人に目礼した。リタ自身は船の整備や機関管理を担っており、操縦や航海術にはそこまで詳しくない。だから、ラウルやライナスの存在は心強いに違いない。

すると今度は、倉庫側から小柄な少女がトコトコと歩いてくる。大きめの作業服に工具ベルトという出で立ちで、少し恥ずかしそうに目をそらしている。アレンが気づいて「どうした?」と声をかけると、彼女は頬を染めて口を開く。

「あの……アレンさん。私、工房で雑用ばかりしてましたけど、もう少し整備の勉強を続けてもいいですか? リタさんの下で学びたいことが多くて……」

どうやらリタの整備作業を手伝っている少女の一人らしい。名前はレイナといって、町の鍛冶屋で働いていたが、空を飛ぶ船の噂を聞きつけて手伝いに来ていた。リタも「むしろ、こちらからお願いしたいくらいだよ」と背中を叩き、「一緒に機関室を守ろう」と頼もしげに笑う。

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