大空の船 – 第3章 後編

すると今度は、離陸場の入口に大きな荷物を背負った男が現れた。風に揺れる長いコートを身に纏い、腰には地図やメモが詰まったポーチが見える。彼はアルバトロスの姿を見つけると、一瞬大きく目を見開き、そして嬉しそうに笑みを浮かべた。

「おいおい、本当にこんな大きな船が空を飛ぶのか? こりゃ面白そうだな」

男はズカズカと近づいてきて、アレンの肩を叩くようにして言う。

「俺はライナス。各地を旅している冒険家だ。この町に来たら“空飛ぶ船がある”って聞いて、こいつは見逃せないって思ってな」

慣れ慣れしい態度だが、不思議と嫌味を感じないのは彼の人懐っこい笑顔のおかげかもしれない。アレンが「冒険家……?」と聞き返すと、ライナスはさも得意気に鼻を鳴らす。

「ああ、陸路も海路もあらかた行き尽くしちまったから、今度は空を行くってのはどうだろうと思ってたところさ。地図にない場所や、未踏の浮遊島なんかがあるって噂を耳にしてな。お前たち、そこまで行くつもりはないのか?」

アレンは意表を突かれた表情でリタと目を合わせ、それからライナスに向き直る。

「実は、まだそこまで考えてはいなかったけど……いつかそういう探索もしたいとは思ってる。いろんな地形や風の流れも調査したいし、まさに未知なる空を見てみたいんだ」

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