大空の船 – 第3章 後編

そうして、少しずつ役割が固まっていく中、アレンは改めて「空を飛ぶ」という行為が自分一人の力だけでは絶対に成し遂げられないことだと痛感する。それぞれが違う経験や知識を持ち寄り、それぞれが不足を補い合うからこそ、未知の空へ踏み出す大きな力になり得るのだ。

夕方になり、アルバトロスの甲板で簡単な集まりを開くと、アレンは甲板の真ん中に立って周囲を見回した。リタ、ラウル、ライナス、そしてレイナ。ここに集まったメンバーが、近い将来さらに増えるかもしれないが、まずはこの四人が核になって船を動かしていくことになるだろう。

「みんな、それぞれ得意なことが違うから、衝突することもあると思う。でも目的は一つ。アルバトロスを空に浮かべて、未知の世界を探検し、可能な限りの高みを目指す。それに賛同してくれてありがとう」

控えめながらもしっかりした声で語るアレンの姿に、リタが「ちょっと固いよ」と茶化すように肩を叩き、ライナスが「まあいいさ。俺たちも不安はあるが、それ以上にわくわくしてるからな」と同調する。ラウルは真剣な面持ちのまま、「船の操縦や安全管理は任せてくれ。全員を無事に連れ帰る義務があると思っている」と言い切った。

こうして、アルバトロスは初めての「正式クルー」を得ることになった。空の先に何があるのか。高高度の悪天候や未知の現象、あるいは予期せぬトラブルも待ち受けているかもしれない。だが、これからは仲間たちとともに知恵を出し合い、力を合わせられる。アレンの胸は大きな期待に満ちていた。

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