ゾンビ社長のリモートワーク – 第2話

翌日、タカシはついに初めてのリモート会議を開くことにした。彼の厳格な指導に慣れた社員たちは、リモートであっても緊張感を持ちながら会議に参加する。画面越しに現れたタカシの姿は、いつも通りの冷静沈着な社長のように見えるものの、どこか違和感があった。声が少し低くなっており、動きがぎこちない。だが、タカシの性格を恐れる社員たちは、誰一人としてそのことを指摘できないでいた。

会議が進む中、タカシは次第に自分の体に異変を感じ始めた。体温が急激に低下し、手足の動きが不自然に鈍くなる。内なるゾンビの食欲がじわじわと湧き上がり、頭の中に生肉のイメージが浮かぶ。それでも、彼は冷静さを保とうと必死に努力した。「ここで動揺してはいけない」と自分に言い聞かせながら、会議を続ける。しかし、社員たちが報告を続ける中、タカシの表情が一瞬苦悶に歪むのを見逃さなかった者もいた。

「社長、体調が悪いのではありませんか?」一人の社員が恐る恐る問いかける。しかし、タカシは鋭い目でその社員を睨みつけ、「問題ない」と一蹴する。彼の毅然とした態度に、社員たちはそれ以上追及することができず、会議はそのまま進行していった。

だが、タカシの体内ではゾンビ化の影響が確実に進行していた。会議中、突然襲ってくる強烈な飢えに、タカシは内心で悲鳴を上げていた。「食べたい…」という衝動が頭を支配し、彼の体は反射的にデスクの下で生肉を探し始める。タカシは冷蔵庫から事前に用意していた生肉をこっそり取り出し、会議中にもかかわらず、それを食べようとする。しかし、食べる音がマイクに拾われてしまうことを恐れ、細心の注意を払う。

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