都会の喧騒を感じる中心部に、一軒の荘厳な洋館が佇んでいた。この洋館は、近代化が進む街の中で独自の存在感を放っていた。佐藤純とその妻、葉子はこの古びた洋館を新居として選んだ。純は子供の頃から歴史に興味を持っており、この洋館の歴史的背景に心を奪われていた。一方、葉子は新しい人生のスタート地点として、ここでの生活を楽しみにしていた。
夫婦は、都心のアパートでの生活から一変、この大きな洋館での新生活を始めることになった。洋館は少し古びているものの、その古さが逆に風格を感じさせていた。純は洋館の中に眠る数々の歴史を想像しながら、その空間を歩いていた。彼は、過去にここに住んでいた人々が、どんな生活をしていたのか、どんな喜びや悲しみを感じていたのかを想像するのが好きだった。
初日の夕方、彼らは洋館内を探索していた。部屋の数は多く、まだ全てを見ていない。大きな窓からは、都会のビル群が望め、夜景がとても美しかった。一方で、洋館の内部は時間が止まったような静寂が広がっていた。
葉子が、2階の一室を探索していると、彼女たちが引っ越しの際に連れてきた愛猫、ミミが部屋の隅で何かをじっと見つめていた。ミミは普段は穏やかな性格で、新しい環境にもすぐに慣れることで知られていた。しかし、その時のミミは、異様な緊張感を持って部屋の一点を見つめていた。
葉子は心配になり、ミミの視線の先を追ってみると、そこには何もなかった。ただ、古い壁紙と、少し古びた家具があるだけだった。しかし、ミミはしばらくその場を動かなかった。葉子はミミを抱き上げ、部屋を出ることにした。純と再び会ったとき、葉子はこの出来事を話し、純も驚きの表情を浮かべた。
引っ越し初日の夜、夫婦は新しいベッドで眠りにつく。しかし、葉子はミミの行動が気になり、眠れない夜を過ごした。