歌う井戸 – 第参話

第壱話 第弐話 第参話

失われた記憶

夜ごとに井戸から響く歌声。村の若者たちが次々と消えていく恐ろしい現象。これらの事件の背後に隠された真実を求めて、陸は一人、調査を開始した。

まずは、井戸に関連する古い文献や村の歴史を調査するため、村の図書館に向かった。図書館の管理人である翔子という老女は、陸の家の隣に住んでいることから昔からの知り合いであった。彼女の目は歳のせいか白濁しているが、彼女の記憶は鮮明だった。

「あの井戸には昔から色々な伝説があったわ。」翔子は言った。「それは櫻村の歴史と深く結びついているのよ。」

彼女は図書館の奥にある、特別な書庫へと陸を案内した。そこには、村の歴史や伝説に関する古い文献が数多く収められていた。陸はそこで、井戸に関する古い文書を見つける。

その文書には、かつて櫻村に災いをもたらす魔物が現れ、村人たちを苦しめていたという記述があった。しかし、ある日、村に一人の美しい乙女が現れ、彼女の歌声によって魔物は封印され、再び平和な日々が戻ったと書かれていた。

「これは…!」陸は目を見張った。「この乙女、もしや井戸の近くに埋められている乙女と同じ人物なのだろうか?」

翔子は静かに頷いた。「私もそのように考えているわ。その乙女の墓は、今でも井戸の近くに残っていると言われているのよ。」

陸は急いでその文書を読み進めると、乙女が魔物を封印した場所は、今の井戸の場所であると書かれていた。そして、その封印の力は、乙女の歌声によって維持されているとも記述されていた。