夜の囁き – 第1章: 2

序章:  第1章:  2

夜が更け、健一は再び囁き声を聞いた。これまで聞こえていた声が、ますます鮮明に、そして恐ろしく感じられるようになっていた。「助けて…ここから出して…」という言葉が、まるで耳元で囁かれているかのように感じられた。

健一はベッドからそっと起き上がり、懐中電灯を手に取った。美咲は深い眠りに落ちている。彼は彼女を起こさないように静かに寝室を出て、廊下へと向かった。

家の中は静まり返っていた。古い木の床が彼の足音に反応して軋む音が響く。健一はまず、リビングルームに向かった。懐中電灯の光が暗闇を切り裂き、家具の影が揺れ動いた。

「誰かいるのか?」と小声で呼びかけたが、返事はない。リビングルームには異常な点は見当たらなかった。次に健一はキッチンへと進んだ。風が窓から吹き込み、カーテンが揺れる音が不気味に響いた。彼はキッチンの隅々を調べたが、特に何も見つからなかった。

「気のせいだったのかもしれない…」健一は自分に言い聞かせるように呟いた。しかし、その不安は消えなかった。彼は階段を上り、2階の部屋を調べることにした。

廊下を進むと、古い屋根裏部屋への梯子が目に入った。健一は少し躊躇したが、意を決して梯子を登ることにした。屋根裏部屋は埃まみれで、古い家具や段ボール箱が乱雑に置かれていた。懐中電灯の光がその一つ一つを照らし出す。

「ここにも何もない…」健一はため息をつき、梯子を降りると次に地下室を調べることにした。