亡霊の街 – 第3話

そのまま資料を閲覧していると、まるで研究論文の一部のような記述に目が留まる。そこには“深刻な犠牲者が出たにもかかわらず、一部の遺体が回収されず長期間行方不明となっている”“この街には、今も彼らの魂が残っているとの噂がある”と記されていた。まるで都市伝説のような一文だったが、佐伯はふと封鎖区域で目撃した不可思議な光景を思い出し、胸がざわつくのを感じた。

その足で佐伯は大学に勤める歴史研究者のもとへ向かった。応対してくれたのは、壮年の教授らしき男性で、「当時の行政データは抜けが多いんですよ。恐らく、何らかの意図があって隠蔽された部分もあるのではないかと私は考えています」と、穏やかながらも核心を突く言葉を口にした。さらに教授の紹介で、かつてあの街に住んでいて火災を生き延びたと名乗る老人の存在を教えてもらった。佐伯はすぐに連絡を取り、約束を取り付けることに成功する。

老人が暮らす古い平屋の家は、町はずれにぽつんと建っていた。玄関を開けると、少し腰の曲がった老人がゆっくり出迎えてくれた。

「あなたが例の街を調べてる記者さんかい? 私は大火災の時、まだ若くてね…家族や友人をあの火事で亡くしちまったんだ」

老人は少し感傷的な面持ちで、ゆっくりと茶を啜りながら当時を語り始める。急に火の手が上がり、あっという間に燃え広がったこと、大勢が逃げまどう中で取り残された者がいたこと、そして—

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