亡霊の街 – 第6話

そして、その街には「封印の儀式」が行われていた可能性を示唆する文献まで見つかった。宗教団体と行政が協力し、街に蔓延する“負の気配”を浄化しようとしていたらしい。しかし、その儀式は不完全だったようだ。書類には儀式に用いる道具や儀式場の位置などが詳しく記されていたが、最後のページは破り取られており、どうやって儀式を完遂させるかという核心部分が欠落している。

「もし、この儀式が中途半端に終わったことで、あの街に縛られた亡霊たちが解放されずに留まり続けているのだとしたら……」

佐伯は声にならない嘆息を漏らした。あの焼け焦げた亡霊が発した「助けて」「出してほしい」という言葉は、まさに封印された魂たちの叫びだとしか思えない。大火災と合わせ、行政や宗教団体の失敗が根底にあるのではないかと推測すると、全身に鈍い怒りが込み上げてくる。

そんな折、佐伯の調査をあからさまに阻むような出来事が起こり始めた。自宅の郵便受けに差出人不明の封筒が届き、中には「これ以上探るな。さもなくば——」と書かれた一枚の紙が入っていたのだ。封鎖区域や当局の影を追いかけていたら、必ず誰かが動きを察知してくるだろうと思ってはいたが、いざ脅迫の形で突きつけられると、流石に背筋が凍る。小野寺や宮島にもそれとなく相談してみたが、彼らの周囲でも不審な人物が出没しているらしい。しかも、警察内部からも「佐伯と関わるな」という命令が暗に出ているという情報まで漏れ伝わってくる。明らかに自分の行動は監視され、邪魔されようとしているのだと確信した。

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