亡霊の街 – 第6話

それでも、佐伯は亡霊たちの声を無視できなかった。夜になれば、自分の意識の奥深くにかすかな囁きが聞こえてくる。「私たちを救って」「すべて暴いて」と——。以前は漠然とした耳鳴りのようだったが、最近ははっきりとした言葉として脳裏に響いてくるようになった。これがただの錯覚ではなく、亡霊たちが本当に自分を通じて外界に訴えようとしているのだとしたら、何としてもこの街の悲劇を暴かずにはいられない。急かされるような衝動と、追い詰められるような恐怖が入り混じり、精神のバランスが崩れそうになる日々が続いた。

そのうえ、亡霊たちがさらに深いところで自分を支配しようとしている気配もあった。夜中、完全に意識が途切れた状態でペンを握り、ノートに何か殴り書きしていたことがある。目を覚ますと、そこには文字とも絵ともつかない奇妙な記号がびっしりと並んでいた。中には炎のような模様や、封鎖区域で見かけた怪しいマークを思わせる形もある。何かを訴えたいのか、あるいは自分の精神に入り込もうとしているのか。どちらにせよ、境界線が曖昧になりつつあるのは事実だった。

脅迫めいた圧力が強まる一方で、亡霊たちの声もますます鮮明になっていく。まるで、あと一歩でこの街に隠された全ての秘密に到達できるかのように思えるが、その一歩が深い闇へと踏み込む瞬間であることは間違いない。佐伯は改めて覚悟を決め、残された断片的な資料を手に、封印が行われたとされる場所について調べ始めることにした。行政が隠し、亡霊たちが求める真実。それが何をもたらすのか、もはや誰にも予測できないと分かっていながら——。

第1話 第2話 第3話 第4話 第5話

タイトルとURLをコピーしました